患者の退院後の生活を考え、伴走者・先導者になることは相談支援の醍醐味

counselor

 
国家資格で働く女性の職業紹介シリーズ。その職業を選んだきっかけ、その職業について嬉しかったこと・辛かったことなどを実話をもとにご紹介します。その職業に就くひとがひとりでも増えるきっかけとなれれば・・・

今回は、社会福祉士として働く女性のストーリーです。
 

生活の再構築をお手伝いできる支援者になりたいと思い、病院で働く医療ソーシャルワーカーを目指した

(社会福祉士になったきっかけ)
私の家族が入院しそこで出会った医療ソーシャルワーカーが退院後の生活支援について相談に応じてくれました。

初めての入院、初めての手術、初めて継続した治療を必要だと医師から説明を受けた後、私たち家族はこれから一体何が起きるのかを想像することはできませんでした。少し時間が経ち、漠然とした不安から具体的な心配事に変わっていきました。

たとえば、経済的な心配として収入が絶たれる、仕事は継続して続けることができるのかということがまず頭に浮かびました。

病院の案内図をたまたま見ていた時、「医療福祉相談室」と病院では聞いたことのない部屋があることを知りました。何気なく部屋の前を何度か通り過ぎてみた時に、その部屋の中にいた人と目があい会釈をした後、部屋に入っていきました。

「どうされましたか?」という言葉に何と答えていいのか悩んでいたら、「どなたのことでご心配なことがありますか?私は病院で困ったことがあればそれをお聞きし、何かお役に立てないか一緒に考える仕事をしています。」と言ってくださりました。
そこで医療ソーシャルワーカーという存在を知りました。

その時私は私立大学の社会福祉学部に通う2回生でした。家族がこの病院に入院していること、医師からの説明で聞いたこと、これからの生活がどうなるのかといったことを脈絡もなく話したと思います。

止めどなく出てくる不安を初めて会う人に伝えました。

その方は黙ってしっかりと聞いてくださり「大変お辛かったですね。」と言いました。話を聴いてくれたという思いがあり、その後も相談したいと思うようになりました。

具体的な話になり「では今、利用できる制度やこれから利用できる可能性のある制度について調べてみたいと思いますのでもう少し詳しく状況を教えていただけますか?」と踏み込んで聞いてくれました。

何度か面談を重ね、実際に患者本人とも会い、本人の希望・家族の希望、今なにができるか、これは本人でないと確認できないことなどその都度教えてくれました。福祉制度も利用する可能性もあり制度の概要から利用するにあたり何が必要なのか、メリット・デメリットの踏まえたうえで本人・家族がどうしたいかを聞いてくれました。

医療の現場と福祉の現場、そして生活の場面の橋渡しをしてくれる福祉職が病院にいて、それには社会福祉士という資格が必要であることを知りました。

私も共に考える立場になり、生活の再構築をお手伝いできる支援者になりたいと思い、病院で働く医療ソーシャルワーカーを目指しました。
 

患者の今まで生きてきた歴史を知り、次の生活をどう構築していくのかといった尊い作業を共にできることが魅力

(社会福祉士になって嬉しかった思い出・良かった経験)
念願の社会福祉士の資格を得て、病院で働くようになりました。

患者さんの今まで生きてきた歴史を知り、そこから次の生活をどのように構築していくのかという緻密で時間のかかる、そしてとても尊い作業を共にできることが魅力だと思います。

目の前にいる患者さんから生き方や生き様を教えてもらうのは勉強になります。時代背景も見えてきます。

患者さん自身は病気や障害という状況になり、そこで改めて自分を振り返る時間を得ることは何とも言い難い時間でもあり自分と向き合うことは苦しいことでもあります。

しかし、それでも生きていくという前向きな言葉や姿勢に、私は励まされてきました。

病院の中ではあまり目立たない存在ではありますが「なにか困ったことがあれば医療ソーシャルワーカーに聞けばいいって聞いて相談室へ来ました。」という言葉を聞くと人と人との繋がりの中で少しでも役割があったと実感します。
 

患者や家族の思いや希望に合った提案や選択肢がない時は、相談専門職として成す術がないのかと落胆してしまう

(社会福祉士になった辛かった・苦しかった経験)
患者さんや家族さんの思いや希望に合った提案や選択肢がない時はやはり相談専門職として成すすべがないのかと落胆してしまうことがあります。

知識や経験不足というもので、もしかすると自分ではない人が同じ相談を聞くと違った答えが出ていたのではないだろうかと不安にかられるときもあります。

治療方針の上で納得いかないことや思い描いていた状況ではない時の怒りや苦しみ、悲しみが医療ソーシャルワーカーにダイレクトに届く時もあります。行

き場のない不安、心配、どうして自分だけがこのような不幸を味合わないといけないのかという出口が見えないような問いを投げかけられることも多々あります。

そのたびに私自身も苦しみ、答えを導き出す作業をしなければなりません。上っ面の表現は簡単に見透かされてしまい、二度と相談に訪れないことも珍しくありません。他者と自分と向き合う時間は何度経験しても辛く苦しいものがあります。
 

患者の退院後の生活も共に考え、時に伴走者になり時に先導者になることは相談支援の醍醐味

(社会福祉士を目指す方に一言)
医療ソーシャルワーカーは病院の専門職の中でもまだまだ認知度が低く、立場も病院により非常に異なります。しかし、必ず必要とされている専門職であることは間違いありません。

患者さんや家族さんは病院を退院してからも生活は続きます。

退院後の生活も共に考え、時に伴走者になり時に先導者になることは相談支援の醍醐味だと思います。ぜひ1人でも多くの医療ソーシャルワーカーが増えればこれ以上うれしいことはありません。応援しています。
 
(社会福祉士)